2017年9月29日金曜日

高齢者の医療需要予測

 地域医療構想調整会議のために、自治体病院では新公立病院改革プラン、公的病院では公的医療機関等改革プランの作成が求められています。

 それぞれの改革プランを作成するにあたり、外部環境として地域の医療需要の把握は必須です。そこで外部環境の大きな要因の1つである65歳以上、すなわち高齢者の医療需要が将来どの程度変化するか検証してみました。

 まず2015年を1として、2020年から5年ごとに2035年までの予測数値を求めたところ、2020年1.08、2025年1.14、2030年1.16、2035年1.17となりました。団塊世代が後期高齢者になる2025年まで、高齢者の医療需要は急激に増加、そしてその後の10年間は緩やかな微増で推移することが予想されます。


 都道府県ごとに同様の方法で算出しました。表は、2035年の医療需要(2015年対比)増加割合の上位・下位10都道府県です。

 沖縄県、神奈川県、東京都など、高齢者の医療需要の増加割合が多い都県では、少なくとも2035年まで、医療需要が右肩上がりに伸び続けることがわかります。一方、島根県、秋田県、高知県といった下位の県では、現状の医療需要がほぼピークを迎えており、早い段階から衰退局面に入ることがわかります。


 マーケティングの視点から考えると、医療需要が成長期にあるエリアと、衰退期を迎えるエリアでは、当然取るべき戦略が異なります。

 成長期においては、拡大する医療ニーズに対応していくことが求められます。一般的には、高齢者が増えると、肺炎、心不全、誤嚥性肺炎といった内科的疾患のニーズが増加する一方で、脳血管疾患や心疾患等は減少する傾向にあります。医療機能も、急性期の需要が減り、回復期、慢性期の供給体制が必要になっていきます。

 また成長期に発生する問題として忘れられがちなのが、ヒトの問題です。医療のようなサービス業では、人材の質とサービスの質が直結します。増加する医療需要に対応するための人材を、早めに確保、育成しておくことが重要です。

 一方、衰退期においては、①シェアを拡大して生き残りを図る、②設備投資の抑制やコスト削減による収益の最大化を図る、③早期に撤退するといった戦略が考えられます。①を考える場合、経営資源が豊富な競合、強い競合に勝負を挑むのではなく、シェアが低く、相対的に弱い競合から患者を奪うことで、自らのシェアを拡大する方策が有効になります。

 次回は64歳以下の医療需要を検証します。

※ 医療需要の算出は、国立社会保障・人口問題研究所の人口推計及び日医総研ワーキングペーパー「地域の医療提供体制の現状と将来- 都道府県別・二次医療圏別データ集(2014 年度版)」の計算式を根拠に、年齢区分ごとの予測人口に対して、65~74歳には2.3、75歳以上には3.9を医療費係数として乗じた値です。