2018年8月30日木曜日

複雑性係数を上げることは出来るのか!? ②

■複雑性指数を上げる(下げる)診断群分類

 図は、主要診断群(MDC2桁コード)別に、それぞれの1入院あたり日当点、入院期間Ⅱの加重平均値を求め、バブルチャートで表現したものです。バブルの大きさは、DPC病院における症例数を意味しています。そのため、図中の右側にある主要診断群の入院症例が多いほど、複雑性指数は上がることになります。

 主要診断群別に考えると、血液・造血器・免疫臓器の疾患、神経系疾患、筋骨格系疾患、呼吸器系疾患が多くなると複雑性指数が上がり、眼科系疾患、小児疾患、耳鼻咽喉系疾患の症例が多くなると、複雑性指数が低下します。

 主要診断群が同じであっても、診断群分類ごとに見ると1入院あたりの日当点は様々です。症例数を加味した、入院期間Ⅱまでの日当点の累積点数の加重平均値は1入院あたり3万点です。診断群分類ごとに考える際は、複雑性指数にプラスの影響を与えるか、マイナスの影響を与えるかは3万点が1つの目安になります。




















■テクニカルな取り組みは非現実的

 複雑性係数は疾患構成の評価です。そのため複雑性係数を上げようとすると、診療科の編成を変える(血液内科、神経内科を拡大し、小児科、眼科を縮小するなど)、入院期間Ⅱの設定が短い診断群分類の症例の入院を抑える(もしくは設定の長い症例を増やす)といったことになり、テクニカルに取り組むには結局のところ現実的ではありません。そのため、複雑性係数の相対的なポジションは、年度間であまり大きくは変わらないことが一般的です。

 しかし、一部の病院では相対的なポジションが大きく動くことがあります。これはどういうことでしょうか。

例えば、DPC病床数が小規模の病院の場合、年間12症例以上になる診断群分類がそもそも少ないため、プラス(マイナス)に働く診断群分類の件数が例年に比べて多かった、年間12症例に達する診断群分類が多かった(少なかった)といったことで、指数が大きく変動します。これが大規模病院になると、多少の変化があっても全体では薄まってしまうため、結局大きな変動は起きづらくなります。

前回:複雑性係数を上げることは出来るのか!? ①http://sasugamanabu.blogspot.com/2017/10/dpc.html








2018年8月15日水曜日

複雑性係数を上げることは出来るのか!? ①


 2018年620日の中医協総会において、平成30年度の医療機関別の機能評価係数Ⅱの内訳が公表されました。

 今改定では後発医薬品係数、重症度係数が廃止となり、暫定調整係数の廃止に伴う財源の置換えが完了しました。その結果、機能評価係数Ⅱを構成する6つの係数は平均値がいずれも約2倍になり、医療機関の係数差も2倍に広がりました。そうした影響もあってか、ここ最近で「どうすれば複雑性係数が上がるか?」「〇〇病院の複雑性係数が大きく上がったがなぜか?」といった質問を複数の病院から受けることがありました。
 
 平成30年度で複雑性係数の最も高い値は、大学病院本院群0.02648、DPC特定病院群0.03791、DPC標準病院群0.03688で、最も低い値はいずれの群もゼロとなっています。

そこで今回は、複雑性係数の評価方法から、係数が変動する要因を検証していきます。














中医協総会資料


■複雑性指数の評価方法
 複雑性係数は、1 入院当たり医療資源投入の観点から見た患者構成への評価したもので、下記が複雑性係数を評価する複雑性指数の求め方になります。

〔当該医療機関の包括範囲出来高点数(一入院当たり)を、DPC(診断群類)ごとに全病院の平均包括範囲出来高点数に置換えた点数〕÷〔全病院の平均一入院あたり包括点数〕

 ただしすべての診断群分類が評価対象にはならず、包括評価の対象で、かつ当該医療機関において前々年10月から前年9月までの期間に12症例以上の診断群分類が計算対象です。

 効率性指数は自院の患者構成を、全病院の患者構成に置き換えて求めますが、複雑性指数では、患者構成はそのまま1入院あたりの包括範囲出来高点数を全病院の平均包括範囲出来高点数に置換えることとなります。
平均的な医療資源投入量を包括的に評価した定額報酬を設定するというDPC制度の前提を考えると、全病院の平均包括範囲出来高点数は、入院期間Ⅱの最大日数まで入院した場合の日当点の累積点数(1入院あたり日当点)と考えることが出来ます。

これらのことから、1入院あたり日当点の高い診断群分類の患者数(割合)が多く、かつ1入院あたり日当点の低い診断群分類の患者数(割合)が少ないと、複雑性係数は高くなると言えます。














中医協総会資料