2018年2月28日水曜日

高齢化率と湿布薬の処方量の関係 ②

■年間処方枚数に2倍以上の地域差

 図は、湿布薬の人口1人あたり年間処方枚数と高齢化率の関係を、都道府県ごとにプロットしたグラフです。

 まず、人口1人あたりの年間処方枚数を見ると、最も多かったのが秋田で年間60枚弱が処方されていました。逆に処方枚数の少ない神奈川、東京、埼玉は年間30枚未満と、秋田と比較して約2倍の差があります。

 また高齢化率が高くなるほど、年間処方枚数は増加する傾向があることもわかります。とはいえ、高齢化率が同程度であっても地域差は存在しているようです。例えば、徳島、愛媛と岩手を比較すると、いずれも高齢化率は30~31%ですが、岩手の33枚に対して、前者の2県は55枚と、年間の処方枚数には1.7倍の差があります。



















湿布薬の人口1人あたり年間処方枚数と高齢化率の関係


■医薬品の適正使用に向けて

 処方枚数の制限が入り、以前ほど発生していないと思われますが、湿布薬は残薬になりやすい薬剤の1つです。毎回のように処方はされるものの、自宅に湿布薬が積み上がっているというケースは頻繁に耳にします。

 今回検証した湿布薬はあくまで一例でしかありませんが、少なくとも湿布薬の年間処方枚数に地域差があること、また高齢者の割合が増加に伴い、湿布薬の処方枚数が増加することがわかりました。当然ながら処方枚数の多い地域では、残薬が発生している可能性も高くなってきます。

 医薬品の適正使用に向けて、服薬情報をいかに的確に把握するかは引き続きの課題です。患者とのコミュニケーションが図りやすく、一元的な服薬管理を求める「かかりつけ」機能に加え、医療機関と保険薬局のコミュニケーションもまた、残薬解消、適正使用に向けて効果的です。次期改定においても、調剤後の服薬状況に関する継続的な把握、情報共有に対して評価する案が出ています。

 2025年に向けて地域包括ケアシステムが構築されていく中で、医薬品の適正使用もまた推進されていくことが期待されます。


前回:高齢化率と湿布薬の処方量の関係 ①

2018年2月15日木曜日

高齢化率と湿布薬の処方量の関係 ①

 次期改定に向けて、「医薬品の適正使用の推進」が論点の1つに挙げられています。医師・薬剤師の協力による取り組みを進めて、長期投薬等による残薬、不適切な重複投薬、多剤投薬等の削減を推進することが基本方針です。

 医療費抑制のために後発医薬品の使用促進に向けた施策は引き続きとなりますが、DPC制度の後発医薬品係数や一般名処方加算等により、使用割合80%の数値シェア目標の実現が見えてきた中で、処方薬の単価を下げる取り組みから、そもそもの量を減らす取り組みにシフトしつつあります。ポリファーマシーの概念も普及しつつあり、高齢者が増加する中で、財政的な問題だけでなく、医療の質の観点からも薬剤を減らそうという気運が高まってきました。

 さらに前回の改定においては薬剤総合評価調整加算・調整管理料が新設され、処方薬を減らすことにインセンティブがつくようになりました。しかし、当社の保有する医療機関のデータを見る限りでは、同加算、管理料が算定されているケースは非常に少なく、当初の想定から考えると、実態としてあまり功を奏していないように見受けられます。

 そこで今回は「量」と言う視点で、前回の改定で適正給付の観点から処方の取り扱いが見直された湿布薬を題材に取り上げ、第2回NDBオープンデータを使用して処方量に関する地域差と高齢化率の関係について検証しました。
 ここで述べる湿布薬は、薬効分類上で「鎮痛、鎮痒、収斂、消炎剤」に該当する貼付剤とします。なお、同データの対象期間は平成27年4月~平成28年3月の診療分となるため、湿布薬の処方枚数の制限が入る前のデータとなることをご留意ください。












中医協資料






平成28年度診療報酬改定で、湿布薬は1処方あたり70枚までに制限。