2018年5月30日水曜日

【2018年度診療報酬改定】短手3はDPC病棟、地域包括ケア病棟のどちらへの入院が収益上で有利か!? ②

■医療機関別係数が低い病院は減収する

 短手3 (K7211)のDPC制度の日数(日当点)設定は、入院期間Ⅰ:1日(3,959点)、入院期間Ⅱ:2日(2,156点)、入院期間Ⅲ:30日(1,944点)です。一方、地域包括ケア病棟では検証条件の場合、14日目まで1日あたり3,338点となります。1日ごとの日当点を比較すると、入院初日こそDPC病棟の方が点数が高くなりますが、入院期間Ⅱ以降は医療機関別係数、出来高算定を考慮しても、多くの場合で地域包括ケア病棟の方が収益上は有利になります。
 
 短手3 (K7211)は、在院日数2日で退院することが一般的です。しかし在院日数2日の場合では、医療機関別係数が1.50のケース以外は減収になります。そのため服薬指導等の出来高算定を含めても、医療機関別係数が小さい病院では、減収することが見込まれます。
どちらの病棟に入院する方が良いのかという議論は、少なくとも収益上からは、入院2日目までは、地域包括ケア病棟よりもDPC病棟の方が有利になることがわかります。但し、医療機関別係数1.20の場合、在院日数3日以上になると地域包括ケア病棟の方が高くなります。



■診断群分類ごとの検証が必要

 短手3 (K7211)は前述の結果となりましたが、診断群分類ごとの期間、日当点の設定や医療機関別係数によって結果は異なってきます。日当点の設定が低い診断群分類では、地域包括ケア病棟の方が有利になるケースも見受けられます。また今回の検証はあくまで数字だけのもので診療体制等を無視した議論となっていますが、どちらに入院させる方が良いのか、病院ごとの実状も踏まえながら個別に検証することをおすすめします。

 また当記事を作成した時点において、短手3に該当する診断群分類が、機能評価係数Ⅱの評価対象になるか明らかになっていません。今回取り上げた短手3 (K7211)は、全国的な症例数の多い診断群分類です。そのため評価対象に含まれると、効率性係数に大きな影響を与えます。病床稼働維持のためや、対前制度で増収からと在院日数を延ばすと、来年度以降の効率性係数に大きなダメージを与える可能性があることも忘れてはいけません。


前回:【2018年度診療報酬改定】短手3はDPC病棟、地域包括ケア病棟のどちらへの入院が収益上で有利か!? ①



2018年5月15日火曜日

【2018年度診療報酬改定】短手3はDPC病棟、地域包括ケア病棟のどちらへの入院が収益上で有利か!? ①

 今改定において、DPC制度の見直しは入院料の評価体系とは異なり、抜本的な変更はありませんでした。しかし、短期滞在手術等基本料の見直しはまだ明確になっていない点があるといえ、今後の病床管理に影響を与える要因となりそうです。

■短手3の算定ルール見直し

 短期滞在手術等基本料の見直しにより、DPC病床を有する病院では、DPC制度による包括評価が優先され、短期滞在手術等基本料3(以下、短手3)を算定できないことになりました。従来制度ではどの病棟に入院しても短手3による算定でしたが、今後DPC対象病院ではこのルールが適用されなくなります。

 そこで疑問として湧くのが、DPC病棟と地域包括ケア病棟の両方を有する医療機関では、どちらの病棟に入院させることがベターかといった点です。特にプライマリー機能を持つ200床未満の病院では、地域包括ケア病棟で従来を上回る評価の施設基準が新設されました。

 今回は、短手3の対象である「K7211 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2センチメートル未満)」(以下、短手3 (K7211))を取り上げ、DPCと地域包括ケア、どちらの病棟での受入れる方が有利か検証します。

【分析対象】
診断群分類番号:060100xx01xx0x
診断群分類名称:小腸大腸の良性疾患(良性腫瘍を含む。) 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 副傷病なし
手術:K7211 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2センチメートル未満)

【検証方法】
 2016年制度の短手3 (K7211)の点数14,314点を比較対象に、DPC病棟では医療機関別係数1.20、1.35、1.50の3パターンで検証します。DPC制度における出来高算定は当社の保有するデータを参考に5,500点とします。地域包括ケア病棟の点数は、地域包括ケア病棟入院料1、看護職員配置加算、看護補助者配置加算、在宅患者支援病床初期加算を算定した場合で計算します。いずれも新制度の点数を用い、転棟はしないものとします。



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