2019年3月18日月曜日

効率性係数を考える③ 戦略的な病床再編、病床管理が求められる

 病床回転率が高くなると、短期的には日当点により病床単価が上がり、中長期では効率性係数の上乗せで、病床単価はさらに上がっていく。また直接の病床単価には影響しないが、重症度、医療・看護必要度や診療密度も上がっていく。

 転棟率が高くても、効率性係数が低い医療機関では、筆者の経験上、入院期間Ⅱを超えた患者の割合が高く、病床単価も低いことが多い。そこには病床稼働を維持する目的で、平均在院日数が長くなっているであろうことも見え隠れする。

 現状の診療報酬制度では、医療機能の分化、集約、連携がキーワードとなっており、急性期病院は急性期病院らしくあることが求められている。政策誘導による在院日数の短縮、医療技術の進展による低侵襲化、さらには人口構造に変化に伴う医療需要の変化に伴い、全国的な傾向として、一般病棟では平均在院日数が短縮し、病床利用率も低下している。

 結局のところ、地域医療構想ではないが、広域から患者が集まる病院は別にして、多くの病院の場合、近隣地域の医療ニーズがあってこその病院であり、ニーズに応える体制を提供する病院こそが生き残るのではないだろうか。

 DPC分析を行うと、医療機関別係数、出来高項目の実施状況によっても異なるが、入院期間ⅡないしⅢ以降では、一般病棟よりも地域包括ケア病棟の方が病床単価が高くなるケースは少なくない。病床単価が低い日が多い場合は、需要と供給がミスマッチ状態になっていると言え、病床再編を検討することが経営上の選択肢になってくる。そして病床数の変動は今回取り上げた病床回転率に繋がっていく。
 
 それゆえ、病床回転率は一般病棟の急性期度合いを測る1つの指標と言えるだろう。

 外部環境の変化に伴い、地域の医療ニーズは常に動いていく。地域の医療ニーズに加え、院内の医療提供体制等の内部環境を考慮した戦略的な病床再編、病床管理は止まることなく検討しなければならない。


機能評価係数Ⅱ


 図は、平成30年度のDPC特定病院群における効率性係数の分布。DPC特定病院群であっても最上位と最下位には2%近い差がある。大規模病院の場合、この差が年間1億円を超える収益差に繋がってしまう。



効率性係数を考える   

2019年3月13日水曜日

効率性係数を考える② 効率性係数と転棟率・病床回転率の関係

今回は、広島県を分析対象エリアに取り上げ、中医協のDPC評価分科会が公表する「平成28年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告について」(以下、公開データ)を用い、各医療機関の転棟率、病床回転率と効率性係数(2017年度)の関係を検証しました。

図は、縦軸に医療機関ごとの効率性係数を、横軸に公開データに示された転棟率もしくは病床回転率をプロットしたものです。病床回転率は、一般病棟への年間入院患者数を一般病床数(DPC対象病床数)で割った値です。

まず転棟率と効率性係数の関係(図1)を見ると、転棟率が高くても、効率性係数は高くないことがわかります。転棟率が30%を超えていても、効率性係数は高くなく、むしろ転棟率が高いほど、効率性係数は低下する傾向がありました。

DPC病院が効率性係数を上げるための手段として、地域包括ケア病棟をはじめとした他病棟への転棟が挙げられますが、単に転棟すれば良いというわけではないようです。


一方、病床回転率と効率性係数の関係(図2)では、病床回転率が高いほど、効率性係数は上がっていく傾向があることがわかります。

これらをまとめると、急性期病院はベッドをいかに回転させるかが重要であることを示唆しています。

DPC





効率性係数を考える   


2019年3月2日土曜日

セミナー「フォーミュラリーの実践・導入と今後の可能性 -具体的作成事例から経営への影響まで-」

注目度が急速に高まっているフォーミュラリー。
そんなフォーミュラリーについて、SSKセミナーで登壇する機会を頂戴いたしました。

現場で活躍するお二人の先生方が事例や手順を講義してくださると思いますので、
前座の私はコンサルタント視点で、いつものデータ分析を織り交ぜながら、
外部環境や経営への影響を中心に検証、解説する予定です。


下記がセミナー概要になります。

セミナータイトル
「フォーミュラリーの実践・導入と今後の可能性-具体的作成事例から経営への影響まで-」

日時:2019年 4月20日(土) 午後1時~午後5時
場所:SSK セミナールーム
   東京都港区西新橋2-6-2 ザイマックス西新橋ビル4F
主催:株式会社 新社会システム総合研究所
詳細・申込みはこちら 

Ⅰ.フォーミュラリーをめぐる動きと経営への影響
   株式会社メデュアクト 代表取締役 流石 学

 質の高い薬物治療を最小コストで提供するための手段としてフォーミュラリーの必要性が叫ばれている。現状は普及しているとは言えないものの、近年の病棟薬剤業務や後発医薬品使用の進展など、環境は徐々に整いつつある。本講演では、コンサルタントの立場から、現状の医薬品の処方状況や課題、さらにはシミュレーションを通じた経営への影響を検討していく。

 1.フォーミュラリーに期待されること
 2.データから見る医薬品の処方状況
 3.医療機関が抱える課題と診療報酬
 4.フォーミュラリーが及ぼす経営への影響
 5.まとめ・質疑応答
 
Ⅱ.東北医科薬科大学病院における院内フォーミュラリー導入事例
   東北医科薬科大学病院 薬剤部長 (薬学部 特任教授) 渡辺 善照 先生

 フォーミュラリーは、本来、医薬品の有効性・安全性を確保し適正使用を推進するためのツールであり、経済性のみを優先するものではない。当院では医薬品の適正使用に役立てるために、医薬品の経済性を考慮しながら有効性・安全性を主体として、さらに患者目線でアドヒアランス確保などの視点を組み入れてフォーミュラリーを進めている。当院が構築したシステムを紹介しフォーミュラリー普及の一助としたい。 

 1.フォーミュラリーの原点と導入する意義
 2.院内フォーミュラリーを導入するためのポイント
 3.院内フォーミュラリーを実施するまでの過程(構築の手順)
 4.院内フォーミュラリーの実例と効果
 5.院外への影響(地域フォーミュラリーへの関わり)
 6.質疑応答
 
Ⅲ.新座病院におけるフォーミュラリーの導入と具体的作成事例
   医療法人社団青葉会 新座病院 薬剤科 主任 金井 紀仁 先生

 フォーミュラリーは客観的な指標を基に作成されることで、医療の発展には欠かせない薬剤費抑制を含んだ医薬品の適正使用・適正な在庫管理・エビデンス創出を促すことができると考えている。戸田中央医科グループの一つで埼玉県にある新座病院(128床)では院内フォーミュラリーを導入し、近隣の東所沢病院との連携を試行することで地域完結型の医療の提供を目指している。今回、フォーミュラリーの作成・導入事例を紹介する。 

 1.院内・地域フォーミュラリー構築による利点
 2.院内・地域フォーミュラリー構築の手順(概要)
 3.客観的なフォーミュラリー作成を目指して1;医薬品の同等量設定
 4.客観的なフォーミュラリー作成を目指して2;優先順位付け
 5.フォーミュラリーの効率的なメンテナンスを目指して

流石
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