2019年2月1日金曜日

カルバペネム系抗菌薬の使用状況に関する検証 ②

■中小病院は特に注意が必要か!?
 図は、公開データをもとに各病院を病床規模ごとにグループ化し、AUDの値に応じた区分の割合を示したものです。

 AUDが小さい、すなわち抗菌薬の使用量が少ない区分に該当する病院ほど、200床未満の中小病院の割合が多いことがわかります。

 一般的に、カルバペネム系抗菌薬の使用量は血液内科や移植手術を行っている病院で多くなる傾向があります。病床規模の大きいグループでは、特定機能病院やDPC特定病院群が中心となり、血液内科や重症感染症の患者が多くなるため、カルバペネム系抗菌薬の使用量が多くなっているものと推測できます。

 しかし、カルバペネム系抗菌薬の使用量が多いAUD「30未満」「30以上」を見ると、200床未満の中小病院の割合が増加しています。特に「30以上」では200床未満の病院が全体の6割以上を占めています。

 ケースミックスによって異なるため一概に横並びの比較は出来ませんが、病院ごとの値を確認すると、100床未満の病院では、AUDが0.1を下回る病院から80を超える病院まで1,000倍以上の差があります。さらに述べるとAUDが40を超える病院は全国で11病院ありましたが、すべてが100床未満の病院でした。この傾向はDOTも同様です。



抗生剤




■急がれる抗菌薬適正使用に向けた環境整備

 感染症専門医や感染制御専門薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師の数は、全国にある約8,000の病院数に遠く及ばない現状があります。特に病床規模が小さい場合、医療者の人数も限られるため、その中で専門の医師、薬剤師を確保することは難しいという実状もあるでしょう。

 またカルバペネム系抗菌薬をはじめとする広域抗菌薬は、処方にあたって届出制ないし許可制であることが感染防止対策加算の施設基準になっています。そのため、現時点でも届出制もしくは許可制の病院は多いと思われますが、事実上、形骸化している病院が多いのではないでしょうか。

 多剤耐性菌のアウトブレイクを引き起こすリスクもあり、AMR対策は病院にとって言うまでもなく重要な課題です。とはいえ、AMR対策を担うASTの役割は、抗菌薬の処方を画一的に制限することが目的ではなく、最適な薬剤を積極的かつ十分に投与することにあります。ASTに求められる役割と責任は非常に大きいと言えるでしょう。


前回:カルバペネム系抗菌薬の使用状況に関する検証 ①